ここに書かれていることはきっと空言です。
***** B再会 *****
「お久しぶりです」
当日は伯母ではなく伯父が同席してくれることになり、
元実家、父の住んでいる家の最寄駅で待ち合わせをした。
伯父と会うのも母と父が離婚して以来だった。
挨拶も簡単に済ませて駅側のファミリーレストランに向かった。
父との面会は元実家ではなくファミリーレストランだった。
元実家には入りたくなかったので、これはありがたかった。
元実家には父の再婚相手で浮気相手だった女性も住んでいるので受け付けがたいし、
人の目がある所のほうが無茶苦茶なことをしないだろうと思ったからだ。
店内に入ると先に来ていた父がテーブル席に座っていた。
あぁ、もう長くないんだな
そう分かる姿だった。
すっかり衰えていて歳相応には見えなかった。
言われるもなく病名は予想できた。
これは癌だな。
皮肉なもので、癌になった母に
「俺には関係ないから自分で治してくれ」
と言った父が癌に侵され死んでいくのだ。
私の心の中には悲しみはなく、哀れみしかなかった。
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